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​代表世話人

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旭川厚生病院健康管理科 部長 大村 卓味

・日本内科学会認定内科医

・日本消化器病学会専門医

・日本肝臓学会専門医・指導医

・日本消化器内視鏡学会専門医

・緩和ケア研修修了者

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札幌厚生病院病理診断科 主任部長 市原 真

・日本専門医機構病理専門医・研修指導医

・日本病理学会学術評議員・社会への情報発信委員会委員

・日本臨床細胞学会細胞診専門医

・日本臨床検査医学会臨床検査管理医

​この研究会について

「札幌厚生病院 腹部画像研究会」は20年以上の歴史を持つ会です。長年、多くの臨床検査技師、放射線技師、そして医師によって愛され、数多くのディスカッションが繰り広げられました。

 2020年3月には、『臨床が変わる! 画像・病理対比へのいざない「肝臓」』(監修 大村卓味、編著 市原真、著者 腹部画像研究会)として、研究会の成果が書籍化されています。

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版元の書籍紹介ページ:

https://www.kinpodo-pub.co.jp/book/1810-5/

Amazonの書籍紹介ページ:

https://www.amazon.co.jp/dp/4765318109/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_t9AYFbM6Z98DZ

本項では、株式会社金芳堂様の許諾をいただき、同書籍に寄稿した腹部画像研究会の紹介文を転載いたします。

 

引用元: 『臨床が変わる! 画像・病理対比へのいざない「肝臓」』(金芳堂、2020)

​(以下引用)

 当会の第1回が開催されたのは、1997年6月9日のことでした。今でこそ、全国津々浦々で画像と病理組織像の対比は行われていますし、腹部画像研究会が立ち上がった当時も、放射線診断医たちと病理医たちが中心となってCT やMRI の対比を行う会は多く行われていました。しかし、超音波像についての検討はまだまだ十分になされているとは言えませんでした。少なくとも、現場でスクリーニングに携わる技師たちが、肝臓内科医の全面指導を受けながら、エコー像と病理組織像を対比していく会というのは、あまりありませんでした。全国的には散発的に勉強会や研究会が立ち上がり始めた頃であり、私たちが暮らす北海道にはほとんど存在しなかったのです。

 当時、神戸市民病院で開催されていた研究会を見学に行った、札幌厚生病院肝臓内科・大村卓味医師と放射線技術部門・戸田康文技師は、超音波画像を扱う研究会を目の当たりにし、強く羨みます。

「症例検討会のレベルの高さと自身の無知に愕然としましたよ」

「あのように、超音波画像の成り立ちをきちんと学ぶ研究会を、我々も立ち上げたいよね」

「とりあえず、見よう見まねでやってみるべや」

 

 こうして腹部画像研究会が発足しました。会場は札幌厚生病院の大講義室。近隣の技師たちに声をかけ、病院の垣根を越えた超音波の勉強会がスタートしました。

 以降、22 年以上にわたり、毎月1回、通算200 回以上も開催されています。肝臓や膵臓、胆嚢のエコー像を見ながら会場の技師たちが所見を読み、CT やMRI などの画像を放射線技師が読み、最後には病理のマクロ像やプレパラート像を供覧して、画像の成り立ちや診断の注意点などについて話し合う、という形式です。

 腹部画像研究会は、「北海道における、超音波・病理対比系研究会の草分け」です。ただ、この会の特徴は単に古いだけではありません。この会には、毎月のように、

・ありふれた診断名だが、所見が少しトリッキーな症例

・頻度がまれだが、所見が典型的な症例

が提示されます。

 また、トリッキーな症例や珍しい症例だけではなく、日頃目にするようなHCC、血管腫、転移性腫瘍などについても、普段“なんとなく”読み流している所見をひとつひとつ病理組織と照らし合わせてみることで、新たな発見があります。

最終診断はHCC だが、エコー像はあまりそう見えなかった症例。最終診断がCoCC で、なかなか普段目にすることがなく、一度はエコー像を見ておきたい症例。最終診断が血管腫だけれども、あらゆるモダリティで血管腫と読みきることができず、手術にて診断が確定された症例……。

 症例にはそれぞれ、超音波検査技師たちが悩むポイント、いつもと少し違うと感じるポイント、疑問点などが複数含まれています。何気なく見ていると見落としてしまうようなBモードの違和感も、多くの人間の目の前で読影をしているうちに、少しずつはっきりしてきます。ドプラやソナゾイドⓇがある症例についてはそれらも参照し、「診断名の当てっこ」ではなく「どのようなメカニズムだとその所見が現れうるだろうか」という観点で議論を行います。時には、エコーだけではさほど悩まないような症例も提示され、「おっ、今日はわりと簡単な症例なのかな?」と安心していると、CT やMRI の解釈がエコーとうまく合致しなかったりして、気が抜けません。手術によって検体が得られた症例については、病理の肉眼像、HE 染色像、さらには免疫染色像などもすべて加味して、病理の解説を行います。なお、病理の解説で「答え合わせをして終わり」ではなく、「画像と病理をそれぞれ見たうえで、湧き上がってくる疑問」についてきっちりとディスカッションをします。

 当研究会のモットーは、

「病理診断は最終診断ではなく、患者と病気をとことん解析するための強力なモダリティのひとつ。Bモード、ドプラ、ソナゾイド、CT、MRI、そして病理、すべてを所見として組み合わせることで、病気の姿が立体的に浮かび上がる」

というものです。

 患者さんにはちょっと申し訳ない言い方になってしまいますが、難解な医療画像を読み解く研究会に参加することは、純粋な知的好奇心を満たしてくれる、とても楽しい仕事です。楽しくて勉強になります。

 この会には札幌中の……時には北海道中の超音波検査技師や研修医、超音波指導医たちが集まります。月に1度開催される定例会では、1例につき40 分~1時間程度を目途に、1日2例ほどが扱われます。Bモード像の読影は日頃から超音波業務に関わっているあらゆるスタッフが行います。次に提示される造影超音波所見は、精査を目的とする造影超音波に関わる大きめの病院の技師が中心となって読影します。CT やMRI 画像については、放射線技師たちが所見を読んで加えていきます。その都度、大村医師をはじめとする指導医や上級者たちが所見を整理し、読み方を探り、妥当性を検討していきます。

 このように、多職種が関わる研究会というのがひとつの特徴です。参加者のレベルも、超初心者から上級者まで幅広いです。

 北海道の場合、超音波に携わる人たちの大半が臨床検査技師で、放射線技師は比較的少数です。臨床検査技師は一般に心電図に明るく、生理機能や生化学検査と超音波とを絡めたディスカッションには強いものの、CT/MRI などの放射線診断部門の技術にはやや疎いところがあります。そのため、放射線技師を交えて、超音波の研究会でCT やMRI の検討もできる機会はなかなか貴重と言えるでしょう。

 また、臨床検査技師、放射線技師を問わず、自らが現場で読んだ超音波の所見の「答え合わせ」までをできることはあまり多くありません。仲の良い臨床医にその後の経過を聞くことができればベストですが、スクリーニングを主体としてエコーに携わっている施設の場合、自施設で精密検査や手術まで施行されていることはむしろまれです。まして、エコーに携わる人たちが(医師も含めて)画像の結果を病理医と直接ディスカッションできる場はめったにありません。

 そしてキーマンとして存在感を放つのは大村医師です。彼の元には、事前には疾患名(答え)が知らされません(たまに自験例もありますが)。答えを知らないまま、技師たちが読影する所見の根拠を評価し、「病名が当たった、外れた」ではなく、「そこにある所見をどう読むか」についてのディスカッションを大切にしています。

 これらの理由から、腹部画像研究会は、エコーに携わる人たちにとって「少しマニアックで、かなりレアな、勉強の場」として長年多くの役割を果たしてきました。

 さらに、定例会に加えて、腹部画像研究会では年に2回の「お祭り」を開催しています。夏には特別講演会を行います。全国から著名な超音波指導者たちをお招きして講演をしていただきます。超音波界のトップランナーたちが最新の「使えるテクニック」をご披露くださる特別講演会には、毎回120 名を超える参加者たちが集まり、会場は熱気であふれかえります。冬になると「画像甲子園」と冠された大会が開かれます。いつもの定例会では、札幌厚生病院の放射線技師たちが症例を準備しますが、画像甲子園では複数の施設から困難症例が提示され、会場の参加者たちを4グループに分けた「4択クイズ・グループ対抗戦」が始まります。4択クイズの選択肢には病名が並びますが、大村医師が特別審査員となり、「診断名が当てられなくても、読影の根拠が優れていた読み手」には特別点が加算されます。つまり、やっていることは定例会と一緒ですが、日頃、症例提示側で答えを知って偉そうに解説などを行っている札幌厚生病院のスタッフたちが、他施設の問題症例に右往左往するのがひとつの見所であり、定例会に比べると、よりやわらかい雰囲気のなかで、思った以上に難解な読影合戦が進みます。

 画像甲子園は忘年会も兼ねており、札幌をはじめとする北海道の主要都市に散らばった超音波検査士たちが一同に会して、1年の労をねぎらったり悪だくみをしたりします。この本の企画も、2018 年の画像甲子園の懇親会の席で具体的な形になりましたが、もともと数年前から「腹部画像研究会の内容をまとめよう」という動きが同時多発的に進行しており、これが懇親を重ねることでひとつに結実した、というのが正確です。

 本書で後に出てくるシェーマの数々は、「技師の直感」や「世に伝わる、名前のついたエコー所見」が、病理組織像の何に相当するのかを表したものです。これらのシェーマの多くは、腹部画像研究会のなかで度々開催されてきた「ミニレクチャー」のプレゼンテーションが元になっています。大村医師は、さまざまな若手超音波検査技師や病理医などに、会を通じて気軽に場と機会を与えてきました。歴代のレクチャー担当者たちは今や成長し、各地で指導者として重責を担っています。

 本書は、彼らが過去に作ってきたプレゼンを、このたび新たにブラッシュアップして掲載しました。大村医師が技師たちに指導してきた膨大なファイルもあります。これらは日本超音波医学会や日本超音波検査学会の主催する講習会などで資料として用いられてきたものですが、腹部画像研究会でも惜しげもなく供覧されてきました。この教科書を構成する柱となっています。

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